『ウルフウォーカー』公開記念 細田守監督 トム・ムーア/ロス・スチュアート監督 スペシャル対談レポート
2020/10/21
東京アニメアワードフェスティバル2021のプレイベントとして、アニメーションスタジオ「カートゥーン・サルーン」最新作『ウルフウォーカー』(10/30(金)より全国公開)の公開を記念して、細田守監督と『ウルフウォーカー』のトム・ムーア/ロス・スチュアート監督とのスペシャル対談が10月19日(月)にオンラインにて行われました。対談の様子は、10月25日(日)にYouTubeにて配信予定です。
配信に先立ち、当日の様子をレポートいたします!
もともと細田監督の大ファンだったムーア監督とスチュアート監督の2人。今回の対談にあたり、事前に『ウルフウォーカー』をご覧になった細田監督は、「本当に素晴らしい作品でした。『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』は誰も見たことのない様なアニメーションで感動しましたが、この作品も期待を上回りました。当たり前なカットがない。1カット1カットが驚きの連続で、森と町との対比が素晴らしかった」と『ウルフウォーカー』を絶賛。細田監督から「児童文学的な要素も含まれた、叙事史的な物語がとても力強かった。どんな風にして作ったのですか」と尋ねられると、ムーア監督は「今回はアクション満載の映画にしたいと思ったんです。これまでの作品で学んだテクニックを詰め込んだんです」、そしてスチュアート監督は「民話的なムード、古典的なムードは狙って作ったんです。町は檻に閉じ込められている様に見せるために平面的に描いて、森では自由な印象を与える様な線を意識して描いたんです。線にエネルギーを残すということも意識しました」と作品の制作意図を説明しました。
司会の数土直志さんから、細田監督とムーア/スチュアート監督に共通するのはオオカミだったり、人が何かに変身するという点があるとの指摘に、細田監督は「オオカミがワルモノにされたのはヨーロッパ的な人間中心主義のせいです。人間が発展していく上で動物を森に追いやる必要があった。でも僕は、追いやられたオオカミや動物のほうに興味があるし、肩入れしたくなる。人間中心主義的な傲慢さではない考え方を通して、現代の僕たちに本当に必要なものを考え直して行くことが大事」と答え、ムーア監督は「自然との付き合い方、人間の中にある“野生”をもう1回我々は抱き直す必要があるのかもしれない。またアイルランドと日本は、アミニズムという観点から似ている気がします」、そしてスチュアート監督は「古い民話には共通点があって、何かしら普遍性があるのかもしれない。アイルランドでは昔からオオカミと人間は共存する関係性だったのですが、キリスト教が浸透してからそれが変わってしまった。古の考え方が今後人間が生き残るために必要なのかもしれない」と答えていました。
細田監督から、カートゥーン・サルーンの今後の制作に関して、CGを使っていく予定かを尋ねられると、ムーア監督は「個人的には手描きにこだわっていきたいが、CGを使うことで表現の豊かさが増えるので必要なところでは使っていきたい。手で出来ないことをCGで補う。それは細田監督の作風とも似てますよね」と答え、日本アニメーションからの影響については「世界中で唯一手描きを続けているのは日本とフランスだけですよね。日本のアニメは大変に参考にさせていただいております」と、スチュアート監督は「アニメーションはリアリティに向かい過ぎていますよね」と語りました。
ムーア監督からの「アニメを作る上で何を大切にしているか」という問いに、細田監督は「家族をテーマに作品を作ることが多いけど、本当に描きたいのは、どうやって子供は成長していくのか、ということなんです」と答え、スチュアート監督からは企画は並行して進めることがあるのかなど、あこがれの細田監督を前に質問が相次ぎました。
日本のファンに向けて、ムーア監督は「過去の作品を含めて自分たちの作品を受け止めてくれてうれしい。是非最新作『ウルフウォーカー』も楽しんでほしい」、スチュアート監督は「このような機会が設けられて大変光栄でした。日本とアイルランドのアニメーション産業との交流がこれからも活発になってほしい」とメッセージを送りました。細田監督も「すごく彼らの作品は日本人好みだと思う。是非皆さん観てください」と太鼓判を押しました。
ちょうど次回作の絵コンテが終わったところという嬉しい情報を明かしてくれた細田監督からは、アニメーションの可能性はもっとあると確信ができたなどの話が出るなど、盛況の内に『ウルフウォーカー』公開記念のスペシャル対談は終了となりました。
対談の様子は10月25日(日)にYouTubeにて無料配信予定です。
『ウルフウォーカー』は10月30日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開予定です。
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